今日も朝から集会場に集まり、天候を伺いながら地元神社の例大祭の準備を進めていく。現在、16の集落が陶屋株を持ち、順番に年一度の例大祭の運営を受け持つ。私の集落が当番となったのは18年前の平成18年以来で私は5年前にUターンしてきたので、初めての経験である。5月頃に神社の宮司と陶屋側が打ち合わせを持ち、陶屋が準備する物や行事内容の説明を受けた。神社としては毎年のことなので慣れているが、陶屋側は十数年ぶりなので、経験者はいてもほとんどは忘れているか、初めてである。例大祭は「口明け」、「宵祭り」、「本祭り」の3つで構成され、簡単に言えば、「口明け」で神様を陶屋の陶席宅に迎え、拝礼して、1週間滞在の後、「宵祭り」として、神様に神社本殿に戻っていただく。そして「本祭り」で神様を神輿に載せ、慰め、本殿から御旅所まで練り歩いて皆で神様を本殿から外の世界を見ていただき、御旅所で一旦、休憩してもらい、氏子の祈願を受ける。そして、再び、本殿に戻って、祭りは終了するという行事である。
今日は「口明け」の1週間前の休日で全員で神社の注連縄の交換を行う予定であったが、生憎の天候で紙垂という半紙の飾りが雨で傷むので大半の屋外設置の注連縄の交換を予備日の明日に延期し、まず、神社の様々な場所に飾る榊や串に用いられる竹細工を行った。竹は知り合いの竹林から先日、切り出した竹を使用する。1時間ほどで40本前後の竹を節の研磨、切断、穴あけを行った。集まった11人で集落の集会場で行った。その後神社に行き、雨の影響の少ない本殿前と本殿内の注連縄を交換した。注連縄と言っても大きなものは長さが3,4mほどあり、重量も2人では持て余すほど大きく重い。支柱として太い竹に結びつけてあり、注連縄の交換は注連縄を支える人、縄で梁に結びつける人と少し離れた箇所から注連縄の水平度を見て指示する人の共同作業となる。しめ縄は梁に固定されるので、高所作業となる。少なくとも2人、できれば3人が同じ高さで高所作業ができる足場が必要で複数の脚立か、2つの脚立に板を渡して、その板に乗り、作業をする。働き盛りの若手経験者が中に居て、高所で重量物の作業を担ってくれ、要領よく進んだ。
神社の例大祭の陶屋制度の維持が氏子の減少、言い換えると農家の減少・高齢化で難しくなっているが、今回の経験を通して実は人のつながりを強化するシステムであることに得心した。獅子舞も同じシステムの一部である。私自身もUターン組であるが、集落に長年ずっと住み続けている人の他に、その縁戚関係者や祭りの好きな人が集まり、共同作業を通じて交流できるという利点のあることを実感している。十数年間の間に住民の娘や息子が集落の外へ出ていくことが多いが、その娘や息子が獅子舞や神社の祭りを子供時代に経験してその楽しさを記憶しており、彼らの子供達を連れて参加してくれるのである。私も普段、付き合うことのないさまざまの職種、年齢、性別を超えた人と交流できることに驚いている。例大祭の陶屋制度は集落を基点とする様々な人の共同作業で挙行できるものであり、逆に普段はばらばらに散らばって生活している人を結びつける制度ではないかと思う。